チューリップの16thアルバム。1985年発売。 チューリップファンの間では、このアルバムの評価はどうも芳しくなく、重苦しいとか暗いとかいわれている。 確かに、他の作品と比べると暗い雰囲気で、財津さんの宇宙志向が暴走して、他のメンバーやファンが置いてけぼりになっている感じはする。 ただ自分にとっては、チューリップのなかで1、2を争うくらい好きなアルバム。 何といえばいいのか、自分をみているみたいだなと思った。空気感がぴったり。 気分が落ち込んでいるときに聴くと、すっと入ってくる。ジャケットも非常に美しい。 ただ、他の人にお勧めできるかというと難しく、癖が強いので、聴く人を選ぶアルバムだと思う。 1曲目「春がくるくる」と6曲目「Route 134」、言い換えるとレコード両面の最初の曲はアップテンポだけど、それ以外の曲は基本的に地味で大人しい。 しかし、聴くほどに癖になっていくというか、後からじわじわと効いてくる、スルメみたいな曲が並んでいると思う。
「ロベリア」は評価の分かれる曲で、気持ち悪いといって毛嫌いする人もいる。 第2期の3人のメンバー (と共に多くのファン) が離れる原因になったんじゃないかとも思うけど、これもすんなりと受け入れられた。 後追いで聴いたからかもしれない。 もし自分が70年代からのファンで、この曲を聴いたとしたら、受け止め方は全然違ってくると思う。ファンをやめたかも。 「2222年ピクニック」「Halo」「I Dream」と一つずつ順に聴いていけば、このアルバムもさほど違和感はないけど、「New Tune」から「無限軌道」や「日本」をふと振り返ってみると、たったの10年でここまで音楽性が変わってしまうとは、と驚く。 チューリップの振れ幅はオフコース以上に大きい。 「ロベリア」みたいな、売れ線度外視の曲を出すのは、相当勇気がいると思う。 もっとファンが喜ぶような、例えば「心の旅」とか「ぼくがつくった愛のうた」みたいな甘い感じの曲をリリースすればいいものを (売り上げももう少し良くなるだろう)、その路線はとっくの昔に切ってしまって、地味な「もっと幸せに素直になれたら」をシングルで出すし、「ロベリア」とか「そんな男になれたら」みたいな攻めた曲をアルバムに入れてしまう。 そういう実験精神というか、ファンに迎合しない感じが素晴らしいと思った。当時付いていけた人は少数かもしれないけど。 「もっと幸せに素直になれたら」が不思議な感じなのは、サビのところで長調と短調が交互にくるからかな。 「アルバトロス」とか、岡田有希子さんに提供した「みずうみ」もそんな感じ。 最後の曲「Our Song」も大好きで、この曲で第2期の宇宙志向が終わりを迎える。 屋外ライブ「8.11 Pagoda」の映像をみると、メンバーは真っ白な服を着ていてなんだか新興宗教みたいで、チューリップは一体どこへ向かっているんだろう、という感じではある。
何とも不思議なアルバムで、妙に惹かれてしまう。